面影橋は、東京都を流れる神田川に架かる橋で、そのロマンチックな響きの名とともに、
多くの歴史的・文化的なエピソードを持つ場所です。面影橋は都電荒川線の面影橋停留場そばに位置し、
現代においても名所として知られています。
この橋は太田道灌の逸話に関連する「山吹の里」の地とされ、江戸時代や明治時代には風光明媚な場所として
多くの人々に親しまれていました。周辺にはお寺が点在し、景色も良く、江戸時代には蛍が多く見られる
田園地帯であったことから、江戸近郊の名所の一つとされていました。橋の北詰には、太田道灌の伝説にちなんだ
「山吹の里」の碑があり、その伝説がこの地の歴史的背景を色濃く映し出しています。
伝説によれば、太田道灌がこの辺りで鷹狩りの最中に雨に遭い、農家の娘に蓑を借りようとしたところ、
娘はただヤマブキの花を一輪差し出しました。この行動は、
古歌「七重八重 花は咲けども山吹の みの一つだになきぞわびしき」に掛けたもので、
蓑がないことを示していました。この逸話を聞いた道灌は、自らの教養のなさを恥じ、
以後は和歌を学ぶようになったと伝えられています。この付近が「山吹の里」であるという話は
広く知られていますが、他の場所も同様に「山吹の里」と名乗っており、伝説の真偽については疑問が残ります。
歌川広重の『名所江戸百景』の中では、現在とは異なる橋の名前が記されています。
手前の神田川を跨ぐ橋が「姿見の橋」、奥の小川に架かる橋が「俤の橋」とされています。
このように、名前の混乱が見られる一方で、現在は「姿見の橋」は存在せず、
「面影橋」だけが現実の存在として残っています。
現在の面影橋は、昔のような華やかな弓なりの太鼓橋ではなく、単純なコンクリート橋ですが、
その周辺の景観は美しく、特に桜の開花時期には多くの人々が訪れます。また、面影橋の北詰には
「山吹の里」の碑があり、これはもともと橋のたもとにあったものが現在地に移設されたものです。
面影橋を渡り、目白台方向に進むと南蔵院というお寺があります。このお寺は三遊亭円朝の怪談「怪談乳房榎」の
前半の舞台の一つで、その歴史的背景や文化的価値も高い場所です。さらに進むと金乗院というお寺があり、
目白不動の現在の所在地となっています。目白不動は元々もっと東にあったものが火事で焼けて移転してきたものです。
面影橋の南詰には新目白通りがあり、その真ん中を都電荒川線が通っています。
現在の面影橋停留所は、20年ほど前までは八百屋の店先の道路に白線が引かれただけの簡素なものでしたが、
現在は整備されており、多くの人々に利用されています。
このように、面影橋は歴史的な逸話と現代の風景が融合する場所であり、
その美しい景観や文化的背景から、多くの人々に愛され続けています。
2022年4月1日
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